スネークヘッドの空気呼吸について

スネークヘッドの呼吸は主として空気呼吸によって行われる、
ということを エアレーションのところでお話し致しましたが、
じゃあ空気呼吸が出来なかったらどうなるのか?
という素朴な疑問をずっと持っていました。
空気呼吸が出来ないと本当に溺れ死ぬのか?、ということを試すわけにはいきませんので・・。

そんなことを考えていたらあるカムルチーに関する文献を
読む機会に恵まれたのでその中で行われた実験の一部を
元に スネークヘッドの空気呼吸について記したいと思います。
カッコ内は私の補足&コメントです。


まず、空気呼吸の頻度についてですが
呼吸の間隔を水温毎に比較すると
21℃〜23℃のときで平均1分〜1.5分毎。
14℃〜16℃のときで平均30分毎。但し間隔には不整あり 2分から1時間まで
水温が下がるほどに平均呼吸間隔が長くなり、不整も著しくなっていくということです。
(これは水温が下がる事で活動が鈍くなり、その結果、酸素消費量が落ちるためだと思われます。)

本題についての実験は以下のように行われました。

幅59cm×奥行き37cm×高さ29cmの水槽に40cm前後のカムルチーを収容、 様々な状況下での呼吸の様子を調べるというもの。

▼実験水槽1
煮沸して冷ました水道水(=溶存酸素が僅少)の中にカムルチーを入れ空気呼吸が出来ないように水面下に金網を張る。
水面には流動パラフィン(不溶性の油状の液体のこと)を敷き、水面から酸素が溶け込まないようにする。

水槽は59×37×29、カムルチーは40cm前後を一匹ずつ。以下の実験も同様

▼実験水槽2
1と同じく煮沸水を使用。
但し金網も流動パラフィンもないので空気呼吸は自由。

▼実験水槽3
普通の水道水を使用。
1分間に100ccの自動換水装置あり。
但し水面下に金網を張り空気呼吸は不可。

▼実験水槽4
3と同じく水道水を使用。
換水装置もあり。
且つ水面には何も施さず空気呼吸は自由。

▼実験水槽5
1の実験でカムルチーが死んだ後の水(つまり水中の溶存酸素が消費され尽くし、溶存酸素は殆ど見込めない)を使用。
但し空気呼吸は自由。



実験結果
★実験1について
(空気呼吸が出来ず、しかも水中も無酸素状態になるわけだから死亡するだろうと推測。)
⇒実験開始後1時間ほどで苦しみ始め、5時間を過ぎたところで死亡。

★実験2について
(溶存酸素は僅かでも空気呼吸ができれば生き延びるんじゃ・・?と推測)
⇒実験開始直後、鰓呼吸を頻繁に繰り返すも、空気呼吸を始めその後は特に異常なし。

★実験3について
(私の一番の疑問の部分。空気呼吸は出来ない状況ではあるが、
溶存酸素には申し分ない。もしかしたら生き延びるんじゃ・・?と推測)
⇒実験開始後1時間ほどで苦しみ始め、32時間を過ぎたところで死亡。

★実験4について
(溶存酸素も豊富で且つ、空気呼吸も自由なら問題は起こりうるはずが無い、と推測)
⇒異常なし。

★実験5について
(水中内無酸素状態でも空気呼吸があれば生き延びるんじゃ・・と推測)
⇒開始まもなくに暴れるも、その後空気呼吸を開始し、異常なし。

以上から、
空気呼吸は生存に不可欠であること、
空気呼吸が自由ならば水中の溶存酸素は呼吸に関する限り問題にならないこと、
溶存酸素が確保されれば空気呼吸が不可能であってもある程度長時間は生きられること、
が説明されます。

引用元:朝鮮総督府水産試験場報告第三号


結果としてみれば何ら目新しいことはないのですが・・、
何と言うか事実に裏打ちされて改めて納得しました。
水中に溶けている酸素は、空気中の酸素の1/33(確か・・)ですから
主要たる呼吸器官を空気呼吸に求めたというのは非常に画期的、効率的なのが良く分かりますね。
といっても、進化云々の話は分かりませんので突っ込まないで欲しいのですが…。(^_^;)

余談になりますが、こちらでカムルチーが鳴くという観察がされていたそうです。
グゥグゥと鳴くらしいのですが、呼吸器官をどのようかして鳴らすことが出来るんでしょうかね。
ウェブリングでも以前そんな書き込みがあったのを思い出しましたが、
その辺も含めて研究が待ち遠しいですね。

>>スネークヘッドを見上げると